- トップページ>
- コラボレーション活動>
- FUTURE-SPECT
コラボレーション活動
FUTURE-SPECT
活動紹介
DNPモビリティ事業部 モビリティ イノベーティブ デザインチーム*(以下、MIDT)では
「(昔からの)あたりまえ」となっているモノ・コトに、現在や少し先の未来の価値観で問いを投げかけ、
そこに現れた「変化」や「ズレ」から見えてくる「未来のきざし」こそイノベーションの源泉であると考えています。
そこで、私たちのデザイン視点で社会課題やクリエイティブトレンドを見つめ、核心に迫り、その先に現れた「未来のきざし」を “FUTURE-SPECT”と名付け、社内外の様々な人たちと次なる革新を生み出すきっかけになることを目指して活動してきました。
FUTURE-SPECTという名前は、
FUTURE…未来
と
PERSPECTIVE…遠近法、視点/SPECTRUM…範囲
を合わせた造語です。
ある時はマクロに(大局的に)、ある時はミクロに(的を絞って)未来を視る道しるべになるようにという想いが込められています。
これからもFUTURE-SPECTを軸にした「未来のきざしの探索/未来のきざしの発信/未来のきざしから導いた展示」など、様々な共創活動を展開していきますので、どうぞご期待ください。
*モビリティ事業部 モビリティ イノベーティブ デザインチーム(MIDT)
移動体(主に自動車)の内装空間向けに提供している製品について、テクスチャーや造形など幅広くデザインに取り組んでいます。近年は印刷にとどまらず、金型などを利用した3D領域を含めたCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)にデザイン領域を拡げています。
MIDTが自主的に制作している自動車内装加飾フィルムのサンプル。
「FUTURE-SPECT Lab. ―素材と思考のデザインスタディ―」展について
(展示期間:2022年4月6日~2022年7月20日)
FUTURE-SPECT Lab.は未来のきざしから製品開発のきっかけをつくるためのデザインの実験室です。
コンセプトから直接プロダクトを導こうとすると、雲を掴むような言葉の解釈のみの議論や、第三者からは背景の理解が得づらいアウトプットになってしまうことがしばしば起こります。
そこで、コンセプト→カタチ→プロダクトとすることで、コンセプトからプロダクトを導く手助けになるのでは?と考えました。
本展示では、FUTURE-SPECTで提示した4つのテーマ、
『NEW VISUALIZATION』『EXPANSE OF NATURE』『NEGATIVE CAPABILITY』『COEXISTENCE』
を軸にしたデザインスタディの成果を、デザインスタディというカタチだけではなく、カタチが現れるまでの思考・素材・過程のプロセスと合わせて展示いたしました。
ガイドマップ
各デザインスタディはFUTURE-SPECTで提示した4つのテーマに関連しています。
また、MIDTが取り組むサーフェスデザインへの取り組みを象徴するオブジェや自動車内装加飾フィルムも紹介いたしました。
サーフェスデザインへの取り組み
リアリティの追求
DNPは、リアルな素材を印刷で表現することに取り組んできました。
中でも特徴的なことは、家庭用プリンタなどでも使われるC(青)M(赤)Y(黄)K(黒)という一般的な4色の色分解ではなく、特色印刷と呼ばれる印刷手法です。
例えば、木目であれば、ちょっと茶色っぽい青、ちょっと茶色っぽい赤…という具合に重ねる色を木目を表現するのに最適な色にして印刷します。これにキラキラ感を表現する光輝性インクの版や、ツヤを表現するグロス&マットインクの版を重ねることでリアルな木目を再現します。
世の中にある木目の印刷物にはひとつとして同じ色の重ねで印刷されているものはありません。
- MATERIAL:アクリル、木目印刷フィルム、印刷フィルム、木材
- DESIGNER:太田浩永
マテリアルの拡張・展開
私たちは印刷の元となる本物の木目などのマテリアル(素材)を「原稿」と呼びます。ひたすらにリアリティを追求することもあれば、そのデータを変換して全く新しい質感を作り出したり、新しい表現の材料に使ったりと原稿の活用方法は様々です。元のマテリアルの可能性を拡げ、様々に展開していくことでひとつの原稿は無限の可能性を持ちます。
- MATERIAL:アクリル
- DESIGNER:太田浩永
ボリュームのコントロール
印刷の特徴の一つが、その「薄さ」です。表面の質感を印刷表現で自在にコントロールすることで、本来ボリューム(質量)があるものを無いように見せたり、実際には軽いものを重そうに見せたり…
印刷を使えば自由自在にボリュームをコントロールすることが可能になります。
- MATERIAL:アクリル、印刷フィルム
- DESIGNER:太田浩永
デザインスタディ
- 1. White Cell―ボロノイ図で描く細胞の広がり―
- 2. Where's the border?
- 3. Random Mapping
- 4. そこにあるのか、ないのか
- 5. KITCHEN MADE PLASTIC
1.White Cell―ボロノイ図で描く細胞の広がり―
細胞の顕微鏡画像を見たことはありますか。
たくさんの小部屋がひしめいているような様子はボロノイ図によく似ていると私は思います。
Wikipediaによるとボロノイ図とは「任意の位置に配置された複数個の点(母点)に対して、同一空間上の他の点がどの母点に近いかによって領域分けされた図のこと」だそうです。
FUTURE-SPECTのテーマの一つである『EXPANCE OF NATURE』は「テクノロジーの発展によって可能となった自然との調和や拡張」をテーマとしています。
「テクノロジーと自然」は一見すると対極にも思える言葉です。
しかし自然界に存在する形を見ていくと、 フィボナッチ数列やフラクタル、 ヘキサゴンといった数列で表すことのできる形が非常に多く、数式で成り立つデジタルやテクノロジーと自然はとても近い関係にあります。
今回の展示では、デジタルツールによって制作したボロノイ図を使って「細胞の広がり」を表現しました。あらゆる生命、私たちの身体の内にも存在する細胞の広がるイメージを見て、「テクノロジーと自然の調和と拡張」について自由に感じていただけたら幸いです。
- MATERIAL:アクリル板 透明、黒(展示台)
- DESIGNER:山村美葵
母点と領域分けのライン。
2.Where’s the border?
『NEGATIVE CAPABILITY』とは言語化できないことを受け入れる能力。(18世紀の詩人、ジョン・キーツが提唱)
このスタディでは、段階的に分解再構築をした言語を都度咀咽してもらうことで、人は一体どの段階で“わからないもの”から“わかるもの”として捉えることができるのかを試みた。
モチーフは誰にでもわかる言語とし、その分解再構築は自分にとって最も身近な印刷手法である【分版・CMYK】*でのアプローチとした。最終的に情報の可視化である『NEW VISUALIZATION』の観点でスタディモデルに昇華した。
*インキの色ごとに分けて印刷物を作ることを分版出力、分解出力という。
- MATERIAL:アクリル、インク
- DESIGNER:中本亮
異なる解像度の“I want you to understand.”を分版しCMYKにした後、それらを重ね合わせている。
3.Random Mapping
人には常に、予測できないことがつきまとう。例えば、サイコロの出目は誰にも予測がつかないし、トランプなど(プレイング・カード)で配られたカードは、めくるまで何が描かれているかわからない。
人は、そこにあるランダムな数字や記号から不思議な縁を感じる癖がある。サイコロの同じ目が続けば「ツイてる!」と思うし、配られたカードがバラバラなら「ツイてない」と感じるものだ。このランダムな数字との出会いの中にある塊(近しい数字の並び)が人に喜びをもたらし、バラつき(離れた数字の並び)が人を落胆させる。ここでは、たくさんのランダムな数字を、高さに置き換え、並べてみることで可視化し、その「塊」と「バラつき」を観察できるようにした。こうして大量のランダムな数字を立方体の高さとして置き換えてみることで、新しい情報の視覚化『NEW VISUALIZATION』を試みた。
- MATERIAL:樹脂(3Dプリンター)
- DESIGNER:大曲景吾
自然現象から数値を抽出し、ランダムを観察できるようにしたデザインスタディ。
4.そこにあるのか、ないのか
あなたは「空気を読む」ことができますか?
『NEGATIVE CAPABILITY』とは不確実さや疑惑のある状態を受け入れる力です。その不確実さを可視化し共有できないか?と考えたことが今回のスタディの出発点でした。
「空気を読む」とは「その場の雰囲気から状況を推察する」ということ。“空気”という、目には見えないものへの感じ方や捉え方は、人それぞれ異なり、場面によっても変化します。その様を、透明な素材で表現しようと試みました。
展示されている一見何の変哲もない透明なキューブ。 中に何かがあるように見えるかもしれませんが、実はたった一つの素材のみで作られています。
見える形は人それぞれ。このデザインスタディは、雲の形のように、あなたの心の中で思い思いに「読んでみる」ことができます。
- MATERIAL:アクリル
- DESIGNER:土橋奈々
テストサンプルの展示
5.KITCHEN MADE PLASTIC
KITCHEN MADE PLASTICは、寒天をベースとした、キッチンで作れるプラスチックの代替素材です。このスタディは、最終的に自然に還り、自然と共存することを目指すムーブメントである『COEXISTENCE』のアプロ ーチからヒントを得て、製造工場のような、私たちから見えない場所で作られるプラスチックを寒天という身近な材料から自分の手で作ることを試みました。
ところで、どうして私たちはプラスチック製品なしで生活できないのでしょうか。便利だから?安いから?衛生的だから?…でも、本当にそれだけでしょうか?
環境負荷の少ないプラスチックに似た素材は、試作段階のものから製品まで様々なものが存在しています。プラスチックに代わるものを探した時に、例えば「耐水効果のある紙」のように、見た目は違っていても同じ機能を持つ素材があります。
それにもかかわらず、「魚の骨や皮などの漁業廃棄物」や「キノコなどの菌類」など、全く別の原材料からプラスチックが作られる理由は、私たちがプラスチックの“見た目”を気に入っているからではないでしょうか。もしそうだとしたら、プラスチックに似た代替素材は、今後ますます私たちの生活に欠かせなくなります。
KITCHEN MADE PLASTICは、新たな素材が生活に浸透する際にかかせない、「素材への親しみ」を手で作ることを通して生むことができるのではないかという試みでもあります。新しい情報の可視化という『NEW VISUALIZATION』の観点から、通常隠されてしまう展示品の作り方を展示会場では公開・配布しました。
- MATERIAL:寒天、水、グリセリン、食品ゴミ・植物など
- DESIGNER:荒井悠希
会場で配布したKITCHEN MADE PLASTICのレシピ。