イベントレポート
素材でつくる、想いのかたち
― アップサイクルでつながる、教育現場とモノづくり
2026.02.13(金)~26(木)
- #アップサイクル
- #教育 #アート
- #デザイン
- #千代田中学校・高等学校
本レポートでは、大日本印刷株式会社(DNP)の建材向け印刷製品のデザインチームが、表層デザインをつくる工程で役目を終えた木質素材を、市谷地区近隣の千代田中学校・高等学校と美術授業に活用した取り組みと、その成果として実施した展示についてご紹介します。
出張授業や作品制作を経て完成した生徒の作品は、2026年2月13日(金)から26日(木)までの期間、DNPプラザにて展示されました。
教育現場とものづくりをつなぐ実践の様子をお伝えします。

デザイン工程で役目を終えた素材を、学びの場へ
DNPでは、空間を彩る化粧シートや化粧鋼板の表層デザインの工程において、実在する木材を撮影して、印刷用のデータを制作しています。その工程では、デザイナー自ら産地や表情を見極めながら木材を調達し、一つひとつ素材を選定しています。
その過程で使用される突板(木材を薄くスライスしたもの)は、事業活動の中で再利用が難しく、役目を終えるとやむを得ず廃棄されていました。
選りすぐられた素材を、別のかたちで活かすことはできないか。
そうした現場の問題意識を起点に、役目を終えた木質素材を学びの場につなげる取り組みが始まりました。

千代田中学校との授業連携に至るまで
今回連携した千代田中学校では、美術科の授業において「仮面の表と裏と」という課題に取り組まれています。この課題は、仮面の表面だけでなく裏側にも表現を施し、自分自身の内面と向き合いながら表現することを目的としたものです。
DNPの表層デザインにおける「表面から内面を表現する」という考え方は、この美術課題とも共通する視点を持っています。
そこで、素材理解と自己表現の双方を深めながら、アップサイクルについても身近に体験できる機会になると考え、本取り組みが実現しました。
出張授業の実施 “素材を知る、素材に触れる”
授業はまず、「印刷」と聞いて思い浮かぶ言葉を書き出すところから始まりました。
新聞やポスターといった身近な言葉を挙げる生徒もいれば、活版印刷や三原色など、専門的な言葉を知っている生徒もいました。
さらに、量産や工場といった、私たちの想定を超えた視点から印刷を捉える回答も見られました。
次に、床や壁、家具、建物の内・外装など、日常の空間にも印刷技術が使われていることを紹介し、本物の突板と印刷された木目シートを見分けるクイズを行いました。
触る、匂いを嗅ぐ、小口を見る。
生徒ひとりひとりが、自らの感覚を頼りに、素材と丁寧に向き合っていました。
正解かどうかよりも、素材をよく観察し、自分なりに考える姿勢そのものが、教室の空気を少しずつ変えていったように感じられました。
最後に、DNPの担当者が素材の特徴や加工のコツについてレクチャーを行い、表層デザインの考え方や楽しさを一緒に体験してもらいました。
その後、生徒たちは、DNPの事業活動の中で役目を終えた突板を活用し、美術課題「仮面の表と裏と」の制作に取り組みました。素材の質感や木目を生かしながら、一人ひとりが「表」と「裏」の表現を探求し、アップサイクルによる作品づくりを実践しました。

作品制作と展示 “教室で生まれた表現を、DNPプラザへ”
完成した作品は、DNPプラザ内「問いカフェ」にて、「素材でつくる、想いのかたち」展として展示されました。
展示では、生徒一人ひとりの作品が主役となるよう、仮面の「表」と「裏」を同時に鑑賞できるよう背面に鏡を設置するなどの工夫を行いました。
教室で生まれた表現を校外の場で多くの方に見ていただく機会となり、生徒の作品や素材の使い方に対して、さまざまな感想が寄せられました。
これは、この美術課題において、作品を通じて外部からの反応に触れる、これまでとは異なる経験となりました。

取り組みを通して見えてきたこと
授業後のアンケートでは、「印刷のイメージが変わった」「身の回りにある素材を意識するようになった」といった声が生徒から寄せられました。
また、展示をご覧いただいた方からも、生徒の表現力や素材の使い方に対する前向きな感想が多く寄せられたほか、課題のテーマに共感し、自らも制作してみたいという声もいただきました。
素材をきっかけに、学びや対話が生まれる可能性を改めて感じています。
担当教員のコメント
今回の取り組みでは、素材のご提供に加え、ワークショップや展示の機会を通して、多くの学びの場をつくっていただきました。
生徒たちは、普段の授業ではなかなか触れることのない素材や、デザインの視点に出会い、刺激を受けながら制作に取り組んでいたように感じています。
制作の過程では、建築やインテリアの分野での素材の使われ方や、素材そのものの特徴についてお話しいただき、生徒にとって表現の幅が広がるきっかけになりました。
また、完成した作品が「問いカフェ」という開かれた空間で展示されたことで、一人ひとりの表現がより立体的に立ち上がり、学校の中だけでは得られない経験につながったと思います。
教育活動の中では、生徒が社会と接点を持つ機会をどのようにつくるかが、これからますます大切になると感じています。今回の取り組みは、その一つの可能性を示していただいたものだと受け止めています。
おわりに
役目を終えた素材であっても、視点を変えることで新たな価値を生み出すことができます。
今回の取り組みは、教育現場と企業、そして地域をつなぐ一つの試みとなりました。
今後もDNPでは、ものづくりの現場で培ってきたノウハウや素材を活かし、さまざまな分野との連携に取り組んでいきたいと考えています。
※記載された情報は公開日現在のものです。あらかじめご了承下さい。




